院内がん登録室

院内がん登録室の役割

弘前大学医学部附属病院院内がん登録室は平成18年4月に発足しました。当時、青森県内で院内がん登録を実施している医療施設は青森県立中央病院と八戸市立市民病院のみであり、当院では三沢市立三沢病院と並んで3番目に院内がん登録を開始したことになります。また、国立大学医学部附属病院の中で当院より先に院内がん登録を開始していたのは、島根大学医学部附属病院と群馬大学医学部附属病院が把握できるだけでした。

それ以来、院内がん登録室では当院に入院された全てのがん患者さんについての詳細な医療記録を登録してデータを蓄積しています。さらに、治療を受けられた患者さんのその後の経過も登録しています。
これらの情報から、当院において質の高いがん診療が滞りなく提供されているかをチェックすることが院内がん登録室の主な役割です。

また、当院は厚生労働省から地域がん診療連携拠点病院に指定されていますので、毎年、登録した症例情報を国立がん研究センターに提供しています。国立がん研究センターでは全国のがん診療連携拠点病院の症例情報を集計しますが、その際には施設ごとのデータも公表されるので拠点病院間での比較が可能になります。そのような比較からも、当院におけるがん診療の質をチェックしてさらなる向上につなげることができます。

その他、院内がん登録室ではがん登録等の推進に関する法律に基づいて全国がん登録へも症例情報を提供しています。青森県は全国で最も平均寿命が短く、その中でもがん死亡率は全国で最も高いことが分かっており、積極的ながん対策は急務です。そして、そのためには全国がん登録から得られるデータを検討して、がん死亡率が高い原因とそれに対する有効な対応策を取ることが必要です。内がん登録室では青森県内の院内がん登録やこれから院内がん登録を開始する予定の医療施設をサポートすることで、より多くの正確な院内がん登録データが青森県地域がん登録に提供されるように取り組んでいます。これは青森県におけるがん死亡率を低下させるための社会貢献として、国立大学医学部附属病院の責務であると考えています。

院内がん登録の登録内容

院内がん登録室では当院に入院された全てのがん患者さんについて、以下のような医療情報を登録しています。

(1) がんの部位とその組織型(がん細胞の形態)
(2) 病期(がんがどの程度まで広がっているか)
(3) がんが診断された経緯(他施設からの紹介、がん検診など)
(4) 検査内容(腫瘍マーカー、内視鏡、CTなど)
(4) 治療内容(手術、化学療法、放射線療法など)
(5) 予後(治療を受けられた患者さんのその後の経過)

院内がん登録の登録症例数

院内がん登録室は平成18年4月に発足して近年では毎年2000症例を超えるがん患者さんの医療情報を登録しています(図1)。平成18年は4月分の症例から登録を開始したのでやや登録症例数が少なかったのですが、それ以後は一貫して増加しています。
このことは、当院に入院されるがん患者さんが増加していることを意味しています。

がんの部位別に登録症例数をみると、胃がん、肺がん、直腸および結腸がんが多くを占めています。その他、乳がんや前立腺がんなどの症例も多く登録されています(表1)。ただ、これらの部位の割合は青森県内のがん患者さんの割合を反映しているものではありませんので、「弘前大学病院では○○がんの入院が多いので、青森県では○○がんが多い」ということにはなりません。

その他の院内がん登録データも、患者さんの個人情報が守られる範囲で順次公開していく予定です。がん診療に関する情報を積極的に公開していくことで、当院が皆様にさらに安心して受診していただける病院になるものと考えています。

図1. 院内がん登録室の年間登録症例数がんの部位別の登録症例数